<< slow learner #64 | main | slow learner #66 >>
2018.08.26 Sunday

slow learner #65

 

駄目な詩人がいっそう駄目になるのは、詩人の書くものしか読まぬからである

 

(駄目な哲学者が哲学者のものしか読まないのと同じことだ)。

 

植物学や地質学の本の方が、はるかに豊かな栄養を恵んでくれる。

 

人は、自分の専門を遠く離れたものに親しまないかぎり、豊穣にはなれない。

 

 

エミール・シオラン

『生誕の災厄』

 

 

 

 

 

 この夏はずーっとタツロー・ヤマシタ・スタディーズ。1980年のアルバム『Ride On Time』より、"Daydream"。以前トライしたときは不本意な仕上がりだったので、再挑戦。例によって例のごとく、ひとりぼっちのスタジオ状態で地味にやっております。よろしかったらどうぞ。

 

 ドラム、ベース、エレピ、ギターの4リズムに、3管のホーンが加わった比較的シンプルな編成です。ライブで映えるタイプの曲ですね。ここでもパーッカションの隠し味が非常に効いています。特に、左側9時の位置に、聴こえるか聴こえないかくらいに入っているカウベルのような音(私はアゴゴ・ベルを使いました)がミソ。夏の日の一瞬のカラフルな心象風景を切り取った、吉田美奈子女史の秀逸なリリックとあいまって、まるで光の乱反射のような効果を生んでいます。

 

 達郎さんのギターは、おそらく最低でも3トラックは使っていると思われます(私は4トラック使いました)。イントロやヴァースで聴ける左側9時のリズム・ギター・パートは、聴き取りにくいですが、おそらく10フレット辺りで弾いたフレーズと、15フレット辺りで弾いたフレーズを重ねているんだと思います。こういったミニマムなギター・パートを組み合わせて、スペースを活かしながら広がりのあるサウンドを作るのは、ナイル・ロジャースなんかも得意としていた手法ですね。まさに『Less Is More』のお手本のような演奏です。


 

 さて、タツロー・ヤマシタ的ギター・サウンドというお題ですが、とりあえずどうしても必要なものは、テレキャスターとフェンダーのピックでしょうか。テレキャスターも細かく言い出すと色々あるのですが、そのへんを掘るのは本稿の主旨ではありません。この際、シングルP.U.のものであれば、材とか年式とかは無視してよいと思います(ちなみに達郎さんの例のブラウンのテレキャスターは1978年製。ボディーはアッシュ、ネックはローズ指盤のタイプですね)。

 

 ピックはフェンダーじゃなくてもよいですが、セルロイド製のもののほうが他の材質のものより近いニュアンスにはなると思います。達郎さんは、おむすび型のMediumタイプを使っておられるそうですが、カッティングだけなら Thinのほうが力を抜きやすくて、よい結果が得られやすいでしょう。そのへんは好みです。あと、達郎さんの使用弦はダダリオの0.10 - 0.46ですが、まあ、これはこだわりたい人だけこだわればよいんじゃないでしょうか。

 

 達郎さんのギターは基本ライン直なので、あとはシールドを卓につなぐだけ。というわけで、わたくしのLogic内蔵アンプシュミレーターの基本セッテイングはこんなかんじ。

 

 

 

 

 アンプ・タイプはClean Tube Amp、スピーカーはDI-Box、EQモードはBritish1。BassもMIdも0です。結構思いきったセッティングに見えるかもしれませんが、色々試した結果、この組み合わせが私のテレキャスターとは相性が良いようです。このうしろにコンプとグライコがつづきます。コンプは深くはかけず、頭を揃える程度。グライコで、200Hzあたりから鍵盤との兼ね合いを見ながらシェルビング、1kHあたりも唄との距離を考慮してうすく削っておきます。ベースやキックとぶつからないように、100Hz以下はさらにばっさり切ることもあります。

 

 あとは曲調や楽器編成によって微調整です。たとえば、今回の「Daydream」の場合だと、鍵盤がフェンダー・ローズだけで生ピが入っていない分、中域のガッツが足りないので、最終的にMid は1.5 に上げました。さらに、異なるギター・パートを左右にかなり振り切って定位させているため、そのままだとセンターの音に比べて引っ込んでしまってステレオ感に欠けると判断して、あとからグライコで1.2kHzあたりを1dB持ち上げたりしています。

 


 ただ、こうやって実音をEQしていくと、どうしてもやりすぎてしまうことがあります。結果、サウンド全体のシェイプが崩れてしまいます。2Mixの決まった枠組みの中では、すべては互いに相関していますから、「目がちいさいから、二重にして大きくしました」式のやり方だけでは(そういった方法もWorkすれば結果オーライなんですが)、どんどん全体のバランスが狂っていくだけなんですね。

 

 たどりつきたいサウンドに近づくためには、音を単体ではなく、「シルエットや背景も含めたイメージ全体」として捉える一歩引いた視点が大切になってきます。実音のかたちを直接変えるだけではなく、それに当たる光の角度を変えたりして陰影をコントロールすることでも、全体の印象はガラッと変わってくるのです。これは、女性のメイク・アップの考え方なんかにも近いかもしれません。

 

 で、最近おぼえたのが、リバーブ成分をEQするという方法なんですが、つづきはまた次回。

 

 

コメント
コメントする








 
この記事のトラックバックURL
トラックバック
Calendar
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>
Selected Entries
Categories
Archives
Recent Comment
Recommend
Links
Profile
Search this site.
Others
Mobile
qrcode
Powered by
30days Album
無料ブログ作成サービス JUGEM