<< ウズラ通信 August.2017 | main |
2017.09.06 Wednesday

Slow Learner #53

 

「なぜなら、なんの疑問も抱かずひたすら従うなんて

 

心のない人間にしかできないことだ」

 

 

映画『Pan's Labylinth』

 

 

 

 

 

今月はなぜか唐突にエリック・クラプトン。1971年、デレク&ザ・ドミノスの『いとしのレイラ』からA面1曲目 " I Looked Away" です。ストラトの音作りとギターの練習のためにやってみたら、思ったよりもうまくいったのでかたちにしてみました。クラプトンのチョーキング・ヴィブラートはやっぱりきれいですね。とてもとてもあんな風にはいきません。ピッチのあまいところは何卒大目にみてくださいませ。

 

 

C-Dadd9-G7と来て、E7-Amを挟んでF-D7(onF#)-Gという、綺麗なコード進行。G7の押さえ方がちょっとした肝になってまして、6弦オミットの5弦から2フレ、3フレ(もしくは開放)、開放、3フレ、1フレといった並びです。3度ルートのG7みたいな解釈です。サビのAm7-B♭sus4の動きも、B♭のベースがFで、B♭sus4(onF) とオープンな響きになっているのがさりげなくよいかんじです。このパートはあまりギターっぽくない発想なので、おそらく鍵盤を担当している共作者ボビー・ウィットロックのアイデアなんだと思います。

 


このアルバム『Layla... and assorted love songs』が、名曲「いとしのレイラ」を筆頭に、当時ジョージ・ハリスンの奥方だったパティ・ボイドに捧げられているのはあまりにも有名なお話。基本的には、親友の妻への道ならぬ恋の喜びと苦しみとの間で引き裂かれる葛藤を唄っています。この ”I Looked Away" もざっと意訳すると「彼女はいつも気持ちを伝えようとしてくれていたのに、俺はそれに気づかなかった。彼女が去ってはじめて自分がどんなにさみしい男かに気づくなんて、俺はなんて愚か者なんだろう」といったような内容です。クラプトンみたいな二枚目が唄うと、ま、これが絵になるわけです。

 

 

注目すべきは二廻り目のサビの歌詞です

 

 

And if it seemed a sin
To love another man's woman, baby,
I guess I'll keep on sinning
Loving her, Lord, till my very last day.

 

 

ここでの "another man's woman" が指し示すのは、端的にパティ・ボイドのことです。「もし、他人の妻である彼女を愛することが罪だというのなら。神よ、私はいまわの際まで罪人であり続けるだろう」というこの感動的なラインに、パティもほだされてしまったわけですが、すこし見る角度を変えてみると、この "another man's woman" は「ブルースやゴスペルといった黒人音楽」のメタファーとしても聴こえてこないでしょうか?

 


ね、そう解釈すると、この歌詞は彼の現在にいたる音楽人生の歩みそのものじゃないですか。「白人である自分がブルースを演奏することが、ブルースを黒人から奪うことだとしても、俺はその罪を背負ってブルースを死ぬまで愛し続けるのだ」という、彼の決意表明のように私には聴こえます。クリーム、ブラインド・フェイスを経て、本当の意味で自分を表現できる音楽スタイルにたどりついた、クラプトンの充実した心境も反映していたのかもしれません。アルバム『レイラ』各曲をたんねんに聴きなおすと、その静かな決意が全体の隠れたテーマにもなっていることがわかってきます。このアルバムはもちろん、ラブソングとしてもすぐれているわけですが、色恋沙汰の苦しみをこういった実存的葛藤のレベルまで昇華できたからこそ、現在にいたるまでわたしたちをひきつけてやまないのです。

 

 

私生児として生まれ、祖父母を両親として育った複雑な生い立ちも影響しているのでしょうか。クラプトンは常に「運命に引き裂かれる状況」にある時、傑作をものしてきたように見えます。そのことが、「ゴシップねたで商売する人」といった批判をまねいたりもしました。ですが、「引き裂かれたもの」として運命に立ち向かう彼の姿は、人間がどうしようもなく人間であることの、ある「本質」を突いています。それがわれわれ聴き手の無意識を揺さぶるのです。クラプトンがこんなにも愛されてきた理由のひとつがそこにあるような気がします。

 

 

たとえ最終的にはその運命を受け入れるしかないのだとしても、神が定めた運命にあらがう者。それが人間です。「永遠に矛盾の中で引き裂かれる者」それがわたしたちの名前なのです。

 

 

このつづきは満月の夜に

 

コメント
コメントする








 
この記事のトラックバックURL
トラックバック
Calendar
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< September 2017 >>
Selected Entries
Categories
Archives
Recent Comment
Recommend
Links
Profile
Search this site.
Others
Mobile
qrcode
Powered by
30days Album
無料ブログ作成サービス JUGEM